• 金. 10月 18th, 2024

ホビーマニアックスHOBBY maniax

フィギュアを中心とするホビー系情報サイト

【Anime Expo 2024レポート】イベント全体に関して・参加者数、会場、イベントとしての方向性の変化

Byhobby-maniax

10月 18, 2024 #Anime Expo

 アメリカ最大規模のアニメイベント、ANIME EXPO(以下AXとも表記)。毎年アメリカ独立記念日の7月4日を挟む日程で、ロサンゼルスにおいて開催されるこのイベント、現在は日本でもそれなりの知名度とニュースバリューを持つようになり、開催時期にはさまざまな情報が流れてくるようになりました。2024年は7月4日から7日まで開催され、ウェブやTVなどのメディアやYoutube、X(元Twitter)、各種公式サイトなどさまざまな形でその様子が流れてきていました。ホビーマニアックスの中の人としても5年ぶりに参加してきたので、あれこれまとめておきたいと思います。

 まず、ANIME EXPOとは?ということから説明することも考えたのですが、それだけでかなり長くなってしまうため、以前書いたこちらの記事を参照してください。
「Anime Expo2019」新作アニメ発表でもコスプレでもない視点から見たイベントレポート
なお、そのときのホビー系については以下の記事も参照のこと。
「Anime Expo2019」ホビー&フィギュア系視点からのイベントレポート

参加者数、今回はスムーズだった入場

 ということで、今年のAnime Expoについてのざっくりしたまとめ。
 まず、今回の参加者は4日間で64カ国から40万7千人超。昨年は61カ国から39万2千人超だったのでじわりと増えています。ただ、この数字に関しては昨年も今年もチケットを上限まで販売して売り切れたもの(今年は去年よりも完売のタイミングは少し遅かった)なので会場の上限値だと思われます。ということは、会場を変えない限り極端に増えることはなさそうです。
 この人数は4日間の延べ人数で、実際に参加したユニークユーザー数は未発表。ただ、2023年のユニークユーザー数として、16万人だったという記事もありました。コロナ禍前は参加者数35万人、ユニークユーザー数11万人くらいだったので、コロナ禍を経てアメリカでのアニメ人気が高まったことで確実に増えているようです。
 参加人数ということでは、昨年は会場収容人数の上限を超えたために消防署や警察に怒られて入場が遅くなったという噂が流れ、Anime Expo側はそれを否定する声明を流していたのですが、今回はそういうこともなく、入場はとてもスムーズでした。
 そう、今回のAnime Expoである意味一番予想外の驚きだったのがこの入場のスムーズさ。前回、2019年に参加した際には入場のために数時間待ちになっていましたし、昨年まで同じような話が続いていたのです(だから前述のような噂も出てた)。かつて、サンディエゴのコミコンがあまりの行列のひどさでLINE CON(行列コン)の異名を取っていたのですが、この数年、Anime ExpoもLINE CONとして名をはせるようになっていました。それが今年はものすごくスムーズで、(自分が体験した限りでは)ほとんど待ち時間なしで入れました。これは、今回入口をいくつも増やしたことに加えて、セキュリティチェックがスムーズだった為と思われます、以前はカバン1個1個開けていたのですが、セキュリティゲートの性能が上がったのか基準を緩めたのか、カバンを持っててもスルーできる場合も多くなってました。個人的な経験ではカバンの中に四角い箱状のものが入っているとチェックされていたような感じ(眼鏡ケースとか)。それもチェックは割とあっさり抜けられました。

会場について

 会場はいつものロサンゼルスコンベンションセンターですが、エリア的に大きく変わった点がひとつ。メイン会場は大きく分けると2つのブロックになっていて、間には大きな道路があってその上を建物がまたぐ構造になっているのですが、今回その道路を通行止めにしたうえで、周辺エリアを含め「AX CROSSING」として日本食的なフードトラックや屋台、ミニステージを配置していたのです。もともとそれなりの交通量&公共性がある場所なので、この仕様は驚きました。

左が今年のマップで、右が去年のもの。注目してほしいのは去年PICO BLVD.という普通の道路だったところがAX CROSSINGとなっているところ。

 見ての通り、普通の道路を封鎖してフードトラックやライブステージ、コスプレギャザリング会場など設定しています。

 AREA MAPにあるように、会場は他にJWマリオットホテルのホールやTHE NOVOというライブホールなど。ちなみにいずれもコンベンションセンターからけっこう離れているので移動がなかなか大変でした。他にもライブイベントがPEACOCK THEATERというかなり大きなステージ(以前のAXでも使ったことのある会場です)で予定されていたのですが、こちらは直前になって中止、結局ここは未使用となっています。なお、この中止は(昨今の状況によりり)「忘れられない体験となるような環境を整えることが、非常に困難である」ためとのこと。ただ、席数の多さにたいしてチケットの売上はなかなか苦戦している感じではありました。

 これが中止発表の前の日にたまたま記録していたチケット販売状態。後半分と中央ブロック後方は最初から販売せず、前半分だけの販売なのですが、白くなってるところが販売済みのところ。緑と黄色の席は売れていない場所。3回ライブは予定されていましたが、いずれも同じ状況でした。

会場のレイアウト変更

 今回の会場内の配置では実は大きな変化が起こっています。後述しますが、これはAnime Expoの立ち位置的にも重要な変化だったように感じています。
 その変化とは、階上のEXHIBITホールと地下のKentiaホールにおいて。これまでEXHIBITホールにはメーカーやショップが並び、KentiaホールではARTSIT ALLEYというアマチュアセミプロサークルの出展、サイン会会場、THE ANNEXというちょっとイレギュラーな感じのメーカー・ショップ展示が行われていました。今回、ARTSIT ALLEYはそのままでしたがサイン会エリアがホテル会場に変更となり、空いたKentiaホール(会場のほぼ半分くらい)はすべてEXHIBITホール扱いとなってメーカー展示&ショップスペースの面積がかなり拡大した形になります。
 そしてKentiaホールを含む展示エリアのレイアウトがこれまでとは違うものになっていました。

 これが以前の配置(2023年のもの)。版権元やメーカーがホール全体の手前側に並び、奥の方にショップ関係が配置されています。

 そしてこれが今年のもの。見ての通り、メーカー&版権元がホール中央奥の方まで並び、ショップ関係は左右の端に並んでいます。
 メーカー&版権元の配置にしても、以前は大きなサイズのブースが入口近くに並んでいたのが、ホールの奥の方へ。ちなみにホールの構造上、奥の方はかなり照明が暗い印象。

 で、左が昨年のKentiaホールで、右が今年のKentiaホール。
 今年は小さいショップ関係がギュッと詰まり、さらにR18エリアも会場の一番奥に設置されています(このエリアに入場するには写真付きIDが必要)。

 ここから先は個人的印象と憶測を含んだ話になるのでしっかりしたデータに裏打ちされたわけではない感想になります。
 今回の配置の変更で思ったのは、Anime Expoはオフィシャル感、公式イベント感がますます強くなっているということ。イベントとして注目度が高まり、世界初発表や初上映も多くなり、日本でもニュースとして報じられることが多くなっているので当然と言えば当然。で、注目したいのが今回の配置変更で入口すぐの中心前面に出たのがJETRO(日本貿易振興機構)が出展した「Geek Street」と、クリエイティヴ・ヴィジョンが大阪商工会議所と共催した日本パビリオン(JAPANブース)の「Festiv’AX JAPAN Pavilion」だったこと。いずれも複数の会社や地方自治体などが参加した合同ブースです。アニメとは直接関係ない日本文化の紹介もあったり、正直お役所的な感じもするものでした。
 昨年まで入り口近くにあったアニプレックス、Crunchroll、グッドスマイルカンパニーなど会場でも最大規模のブースがそれらは奥の方に。
 バンダイグループは会場中央あたりに複数のブースを配置してそのあたり一帯をバンダイエリアという感じにしているのですが、去年は入り口すぐの配置だったのが少し奥に移動しています。ただ、以前よりブロックが増えて、今回は6ブロック体制になっていました。
 前述のように小さめのショップ系のブースはその多くがKentiaホールの方に行っています。Anime Expoのショップエリアはこれまでさまざまな問題が指摘されていました。版権的にグレイだったり、一応ホワイトではあるものの道義的にどうだろうと思わせるようなアイテムを置いてあるところがかなりあったのです。これはあくまでも個人的な印象ですが、そういったちょっとあやしげなアイテムを扱うお店が多くKentiaホールにはあつめられていたような気がします。もちろん全部が全部そんなわけではなく、Kentiaホールにもオフィシャルなメーカーがあったり(タイトーもKentiaでした。ホールの一番手前に配置されていましたが)、EXHIBITホールの方にもちょっとあやしげなのがあったり。また、以前はEXHIBITホールに配置されていた18禁エリアがKentiaでも最奥に配置され、入口がさらにその奥の奥側に設置されていた、見えにくいところに押し込んでいるという感じになっていました。ソレも含めて配置には意図的なものを感じるところではあります。

なくなったVIDEOというプログラム

 また、これは今年からではなくコロナ後初開催となった2022年から起こった変化ですが、2019年以前にあったVIDEOというプログラムがなくなっています。これは、TVアニメやOVA、劇場アニメなどさまざまなアニメをビデオ上映するプログラム。以前はこのプログラム専用の部屋がいくつもあり、夜中すぎまでいろいろやっていました。これも基本的にはオフィシャルなものではない勝手上映だったわけですが、近年はともかくとしてもアニメコンベンションが始まった90年代前半にはかなり重要なプログラムだったはずです。アメリカでアニメを見ようにもその頃は配信もなく、知人からビデオのダビングをもらって見るのがせいぜい。アニメコンベンションに来れば、見ることが出来なかったいろんなアニメをまとめて見ることが出来るというのは大きな魅力だったはずです。コロナ禍でのAnime Expo再開時にプログラムを絞って開催するときにVIDEOはなくなり、その状態が継続しているわけです。もちろん、現在のように配信などでいつでも新作アニメが見られるのであれば、こういったプログラムは不要といえるでしょうし、さらにオフィシャルなメーカーや製作会社が数多く参加しているイベントとしてはは、こういったグレーな上映が今後再開するとも思えません。

 現在アメリカでのアニメ配信最大手となってソニー傘下になっているCrunchrollも、最初はファンがビデオに字幕を付けてネットに投稿するFANSUBという版権的にはNGな事業から始まっいます。Anime Expoもカオスな部分を切り捨てて、公式としての方向性でイベントを再構築しようとしているというのが今回会場に行ってみての感想です。

 実際、今秋開催のAnime Expo ChibiではCrunchroll主催でさまざまなアニメを上映する部屋が設けられています。以下のリンクがそのスケジュール。オフィシャルな上映が一日中行われているのです。
screenings – Anime Expo (anime-expo.org)

これから

 個人的にはここまでガチガチになってくると少し面白みに欠けるところがある上にレポートがかなり出るので状況もつかみやすいですし、他のコンベンションに参加するのも面白いかなぁと思い始めています。候補としては東海岸のアニメコンベンションで、ワシントンDCで開催されているOTAKONやニューヨークのAnime NYCあたり。OtakonはAnime Expoと同じく90年代前半に始まった老舗で、昔ながらのコンベンションの雰囲気が残っている模様。逆にAnime NYCは始まって10年も経っていない新しいものですが、サイン会やパネル参加などに事前申し込みや抽選を採り入れるなどさらに進んだシステムになっているのです。いずれもAnime Expoに次ぐ規模で、東海岸を代表するアニメコンベンション。特にAnime NYCは昨年の参加者6万3千人に対して今年は10万人と一挙に1.5倍規模に急増。これは昨年までの11月開催に対して今年から8月開催になった影響も大きそうです。なお、ここでいう10万人とはユニーク参加者数。3日間開催のイベントの延べ人数ではありません。規模的にAXにもかなり近づいてきていることが分かります。
 東海岸の開催だと、メーカーや版権元はともかくとしてショップ・ディーラー系は西海岸とはかなり異なるメンツが並んでいるはずなので、それを見てくるのもおもしろそうかと。一応再来年、2026年あたりを考えています。
 ただ、Anime Expoのほうもガチガチの公式化&巨大化することに対して思うところがあるのか、秋にロサンゼルス近郊で開催されているAnime Expo Chibiという小規模なスピンオフイベントでは“in a cozier and intimate environment.”(より居心地の良い親密な環境)をうたっています。他の宣伝文言を見ても、なんとなく昔の雰囲気を目指しているような節があります。こちらはまだ始まったばかりなので、今後の方向性には注目したいところ。

■関連リンク
Anime Expo