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  フィギュアのいろいろを振り返っていこうというのが、このフィギュアクロニクル。まずはインタビュー記事と併せて『美少女戦士セーラームーン』について!

 セーラームーンの人気

20周年プロジェクトがスタート、フィギュアでもまずはS.H.Figuartsの受注が開始された『美少女戦士セーラームーン』。その後のポップカルチャーに計り知れない多大な影響を与えた、1990年代前半を代表する作品ですが、フィギュアというジャンルではさらにその影響は大きいものでした。ちょっと極端な言い方をすれば、ジャンルとしての美少女フィギュアはここから始まったとも。

もちろん、セーラームーン以前にも美少女キャラの立体化は行われていました。『うる星やつら』のラムのプラモがあったり、ガレージキットでも『きまぐれオレンジロード』の鮎川まどか、『超音戦士ボーグマン』のアニスなど人気キャラも多数いました。

しかし、セーラームーンは人気面においてはさらに圧倒的でした。5人のセーラー戦士たちのバストショットフィギュアは表紙を飾ったホビージャパンは、こんな表紙では本屋で買えないという旧来の読者からクレームがいっぱい来たそうですが、それでも完売に近い売り上げだったとか。

造形そのものへの影響

セーラームーンがフィギュアに与えた影響というのは、単に人気が高かったというだけではなく、この作品をきっかけに美少女キャラクターという2次元の存在を3次元に置き換えるための技術が急激に高まり、ノウハウが集まっていったというのがとても大きな事でもありました。美少女キャラを似てて可愛いく立体化すると言うのは、今でこそ当たり前のようになっていますが実はこれは大変なことなのです。メカやヒーローものの立体化とはまた異なるノウハウが必要になります。2次元の絵の嘘をそのまま3次元にすると立体としては成り立たないし、実際の人体構造にキャラを押し込めてもキャラとしては似ないしむしろ不自然に見えてしまいます。

美少女戦士たちを2次元から3次元に置き換えるために様々な表現方法やテクニックが開発され、それがほかの原型師たちに影響を与え、さらにそれが改良、発展していくということが繰り返され、それまでとは異なる次元の造形が行われていくようになっていきます。それは顔の面取だったり、スカートのプリーツのシャープさだったり布の柔らかさだったり、それまでになかった髪の毛の表現だったり、まとっている衣装の材質の表現やしわの表現だったり、さわるとプニプニしそうな柔らかさの表現だったり。現在も活躍しているベテランのトップクラス原型師が何人も、この頃からセーラームーンをきっかけの一つにして頭角を現してきています。

ちょっと余談ですが、セーラームーンの立体化ではパッと普通に見たときにパンツが見えるのは版権的にNG、だけどスカートはなるべく短い方が足も長く見えて格好良くて色っぽい、ならパンツをハイレグにしてスカートの下からはみ出さないようにしてしまえ、結果パッと見るとパンツをはいてないように見えるように作る、という立体ならではのテクニックも生み出されたりしました。このテクニックは現在でもよく使われていますね。

商品形態の変化

さらに商品的にもセーラームーンの頃から状況に変化が出始めます。そのころは美少女キャラのちゃんとした立体は、未塗装未組み立てであるガレージキットでしか手に入らないものでした。そういったガレージキットでさえ、ものによっては数万個売上があったというのですから驚きですが。とはいえ、基本的にガレージキットはマニア向けのもの。一般商品では昔ながらのだるい、おもちゃ的な造形のものが主流でした。そこへ、ガレージキットで培われたノウハウが投入されたものが登場するようになったのです。バンダイから発売された「エクセレントドール」シリーズは当時のラインナップとしては異質なリアル等身の大型フィギュアでしたし、ガシャポンの「クロスアップ」シリーズは未塗装ながら造形的にはハイクオリティなリアル等身フィギュアでした。いずれもガレキ的なテイストが味わえる一品です。

 

エクセレントドールシリーズは、ドールといいつつ大きさは40センチ以上、髪の毛も植毛ではなく成型品。発売はバンダイの女玩ですが、1万円超えの商品でいわゆる大きいお友達が想定ターゲットと思える商品でした。

 

クロスアップシリーズは、本体は肌色単色のリアル頭身フィギュアで、その上にセーラー服のプラ製コスチュームをかぶせる形になっていました。いずれも色こそついていませんが、特に本体はかなりセクシーな造形。

 

 

JAFCONとワンフェスのことだったりとか、セーラームーンの立体関係についてはまだいろんなネタはありますが、それはまたあらためて。他のフィギュア関係全体の振り返りなどもふくめて別の機会にお送りします。