【スペシャルレポート】フィギュア業界の現在・スケールフィギュアの雄、アルターに聞く[前編]

By on 2014年7月15日
あれこれ状況が大きく変わりつつあるフィギュア業界。
よりクオリティの高い物が求められるようになる一方で、人件費や材料費などによる工場の原価アップ、円安、消費税アップ(カプセルフィギュアやプライズは内税なので直接ダメージも)によって価格も上昇。現在1/8スケールくらいのフィギュアだとベースなどちょっとした物を付けて1万円台半ばくらいになるのは決して珍しくない状況に。
さらには深夜アニメの人気継続期間が短く、人気が高かった作品も半年も経つとそこそこ止まりになり、かといってこれはヒットするだろうと始まる前からフィギュア制作に入っていても、いざ放送が始まってみると本命視されていた作品がそこまでヒットしないというのも良くある話。
造形側でもデジタル造形の普及が進み、3Dプリンタへの注目も高まっています。
以前ウェーブさんへのインタビューでその状況の変化についてお話を伺ってきましたが、そのあともいろいろ取材は続けています。ただ、その取材をちゃんと記事にまとめるのに手間取ってしまい、なかなか記事に出来ていません。いつまでもそのままには出来ないので、そういった取材記事をこれからまとめていきます。
まずは、固定ポーズのフィギュアでは最も人気の高いメーカーのひとつであるアルターのインタビューから。これは特にいろんな理由で記事化が遅れた物で、インタビューは昨年12月に行った物です。インタビューは事前に質問項目にテキストで答えていただき、それを見ながら補足でアルターの矢吹さんと桜井さんにお話しをいただくという形です。記事中のQとAがテキストによる物です。

 

お話を伺った、アルターの桜井猛さん(左)と、矢吹 崇さん

お話を伺った、アルターの桜井猛さん(左)と、矢吹 崇さん(右)。

アルターという会社、スタッフや原型師について

Q:アルターの成り立ちについて

A:弊社は2005年3月から主にフィギュアの企画・製造・販売を行う会社として設立しました。メンバーは自分も含め、元々業界で働いていた者でしたので、問題もなく円滑に進んで良かったですね。一番最初のフィギュアは座っている綾波レイとアスカです。レイが一体目ですね。イベントで出ていたガレージキットを買い取り・修整したものです。

矢吹:フィギュアの製造は申華ジャパンでやっています。社長が一緒でお互い協力しているという関係ですね。

Q:アルターのスタッフ構成はどんなかんじですか? 

A:(2013年12月段階で)社員数は28名。原型師(原型製作・フィニッシャー)が16名と半分以上を占めています。その他企画・開発で5名。パッケージなどの制作・デザインで4名。その他経理や営業という構成となっております。

矢吹:原型師フィニッシャーが半分以上というのは多いと思います。他のメーカーさんではなかなか無い規模かと。マックスファクトリーさんも原型師が多いので近いかもしれませんね。

桜井:企画では5人中4人がそれぞれのフィギュア企画を動かして、1人が全体に目を通すって感じですかね。

Q:原型師さんのうちわけとしては? また、社内原型師と社外原型師での取り組み方のちがいについては? 

A:社内原型師は16名のうち、原型製作を行っている者は14名となります。あとの2名は彩色(フィニッシャー)専門です。
外注で製作や塗装をお願いしている原型師は14~16人前後となります。それぞれスケジュールなどもありますので、お願い出来るときにご相談させていただき、依頼している形となります。また外注ですので特に他社の原型製作があれば、そのあとにお願いするなど、お互い無理は無い様に進めております。
外注原型師は良い意味で、それぞれの魅せ方が多種多彩で味があるので、それを出来る限り活かせればとは思います。とはいえ一般商品として展開するにあたり、版権元から調整の依頼などがあった際、その調整は外注の方に続けて調整をお願いしたり、社内で微調整をして進めることもあります。

矢吹:現在はけっこう外注も増えているんですよね。一時期は減らしたこともあったのですが。今はまた増えています。

桜井:製品的には1対1くらいですね。

矢吹:新しい人にお願いして、多少育てている人もいたりするので。正直多いですね。

桜井:5~6人かなぁと思っていました(笑)。

矢吹:ツテだったり、前から知っていたり。

桜井:あとはこちらから声をかけさせていただいたりも。

矢吹:原型師さんからの売り込みや応募は、たまーにあるくらいですね。

 アルターの現在

Q:現在のフィギュア業界でのアルターの立ち位置についての自己分析をお願いします。

A:品質の良い物、クオリティをお客様から求められていると弊社も実感しております。その点を重視した原型、量産品が出来るように日々進めている次第であります。
勿論 皆さんが今欲しい物・旬な物から商品化して欲しいというのは当然ありますので、その点も気にはしつつも、弊社でなければ!という品質の物を提供し、業界を盛り上げるのがウチなのかなーと思っております。

――フィギュアもねんどろいどやfigmaというシリーズで語られることが多くなっておりますが、アルターの場合はアルターというメーカーがある種のブランドとして語られることが多いですよね?

矢吹:最初の頃イベントとかに参加したときには小物とかグッズ系も展開しておりましたが、だんだんそれも無くなってきて、デフォルメとかもあまりやったことないですし、今はスケールもののフィギュアしか作ってないですからね。それでスケールフィギュア=アルターと思ってもらえるなら、それはそれで幸いだなと思います。いろいろやってみようかと考えたこともありますが、結局は戻ってきてしまうという現状ですね。

 ――アルメカは今後?(編注:6月に「戦闘妖精雪風」2点の再販がアナウンスされました)

桜井:タマをためて、発表したらなるべく遅れないようにしたいなと(笑)。いまはちょっと差し控えています。

矢吹:メカものを作るには工場もなれてないといけませんし。うちも指導しながらお互い今後良くなっていければなぁと。

桜井:フィギュアと同じ工場を使っております。工場がポリストーンとかのフィギュアからまず始めたところで、トイから始めたところではありません。それが強みのところもあるのですが可動とかそういったトイ的なところは苦手というか、あまり意識してなかったと言っていたので、それは意識して欲しいなぁと(笑)。

Q:作品やキャラクターの選択についてはどのような考え方でやっていますか?

A:やりたいものをやる、という感じはありますね。企画側からの提案もあれば、原型師から要望あったものを検討して商品化もしております。企画としてはある程度お客が欲しい物・売れる物というのも考えて展開しつつも、これはどうかな?というのも差し込んで企画しております。
どうしても企画から販売まで期間が必要な内容なので、悩みどころもあるのですが、最後は担当者のやる気でしょうか。関わるなら、あとから立体化するのであれば、皆様に納得出来るものを提供する。というところで、結局はやりたいものをやっているのが弊社の企画になっております。

――フィギュアのラインナップはその結果かなり特徴的ですよね? 作品のセレクトだけではなく、そのサブキャラクターを最初に出すんだみたいな。やりたいものからやってる感じがします。

矢吹:ウチが特徴的なのかなぁ(笑)。まあ確かに多少あまのじゃくなところもありますね。

桜井:主人公は万人向きではあるのですが、いいなと思えるキャラクターはサブキャラっていうことが多いのかな。

矢吹:そう考えるとやっぱり好みで出しているところが多いですね。企画だったり、原型師だったりの好みで。原型師との話の中でやりたいということになったら、企画を立ててみて他メーカーがやってなければやってみようかとなるし、他でやっていても後から出すなら、より良いものを作りたいなぁと思っています。でもあまのじゃくに見えるよね、他のところと比べると(笑)。

桜井:あと流行り物を追っかけていくとうちのペースだとちょっと(笑)。

造形・塗装・スケジュール

Q:造形や塗装などでこだわりのある部分は?

A:社内の原型師は製作途中の原型を、社内のメンバーで一度確認するディスカッションを必ず行っております。これは他者が見て違和感がないかどうか。またどのようにすれば自然に綺麗な流れになるのかなどを検討し、反映していく確認作業となります。
例えば髪の動きなどはフィギュアならではの一瞬の動きを切り取った表現となります。様々な角度から綺麗に見えていたり、不自然なことが無いよう原型段階ではかなり気を使って確認と調整を繰り返しております。
塗装についてはキャラクターの雰囲気を大事にしつつも、どうしても撮影した画像を見る機会の方がお客様は多い為に、撮影時に多少映えるような強弱を盛り込んだ塗装もしております。撮影すると実物より大きく取り扱う場合もありますので、瞳の塗装などは特に時間をかけております。

――ディスカッションとは?

矢吹:ディスカッションで指摘された部分を踏まえるか踏まえないかも、ある程度担当原型師に選択させてはいるのですが、「ヘンだね」と思ったらいろいろ直さなければいけないので、ものによっては大改修になることもあります。それもあって原型アップ自体は、かなり時間はかかっているのかもしれませんね。昔に比べると少し長くなっています。

桜井:でもフィギュア自体も昔より複雑になっていますし。

矢吹:そうですね、情報量も増えているし。

――版権元の監修よりも社内の方が厳しい感じですか?

矢吹:うーん、どっこいどっこいかな(笑)。監修先もモノによっては表現として難しいこともあったり。原型師さんの味をくみ取ってくれる版権元さんもあるのですが……。そこらへんは多種多様です。

Q:最近発売が遅れ気味でしたが?

A:発売が遅れておりまして恐れ入ります。徐々に解消できるように進めております。
生産依頼をしている工場の生産ラインですが、自社・他社の予想以上の数量でキャパシティオーバーした事による遅延もありますし、形状や彩色にいろいろとこだわってしまった結果、スケジュール調整が瓦解してしまった為にご迷惑をおかけいたしております。

 ――企画スタートから完成までの期間は?

矢吹:以前と比べるとかなり遅れ始めていますね。

桜井:企画から1年後くらいのイメージですね。

――いまの1クールで展開しているアニメのペースだと、作品選択はやりにくそうですね。

桜井:出来るなら欲しいのはいっぱいあるのですけどね(笑)。

矢吹:企画者としては、その瞬間で欲しいものはいっぱいあるのですけどね。でもどうしてもスケールものだと原型で2~3カ月は当たり前にかかるし、さらに社内原型師はディスカッションしながらより良いものを作ろうとしていくので、それでまた微調整してかなり伸びたりすることもありますね。
開発を進めていて、予想外のパーツ成型でうまくいかなくて手間取ったりとか、そういうこともあったりします。もちろん商品発売を遅らせたくはないのですが、では、このクオリティでいいのかということにもなるので。譲れないクオリティの部分があるとどうしても遅れてしまわざるを得ないのは確かですね。工場に怒られつつ、お客様に怒られつつやるのが企画の仕事です(笑)。でも最終的にお客様も企画も納得できるものを出せなければ意味が無いですから。だからといって遅れて良いわけではないのも存分に感じております。難しいですね、このバランスは。昨年はかなり遅れたので、申し訳がないとしか言いようがないです。

桜井:形状や構成が難しいものが、結構入っていましたからね。

 ――量産する際で苦労することは?

矢吹:基本的にはガレージキットと同じような分割とかパーツ構成だったりするのですが、製品版で素材が変わることによって原型では複数のパーツだったのをまとめて1つにできたりとか、逆に原型だと抜けたのに素材を替えるとどうしても不良が出てしまうとか問題は大なり小なりあります。なかなか解消されないと発売そのものが伸びてしまったりとかすることもありますね。
マウンテンバイクが付いているフィギュアがありましたが、自転車のパーツ数が多いというのもあったのですが、成形でも途中で不良が出てしまったり。スポークが特に大変でした。結果、工場側の成形とかの手間で発売が伸びてしまいました。申し訳ないです。

桜井:自転車の素材もいろいろ試作をしましたね。スポークも最初はエッチングで作ったりとか、金型も細さの限界を調べるのに彫ったりとかしておりました。そのかいもあって最終的な商品は思うものが出来てきたかと。

インタビュー前半はここまで。アルターというメーカーの他には無い特徴や仕事の進め方など、非常に興深い物でした。これだからこそああいったフィギュアが生まれてくるのだなぁと。続く後半では中国工場、デジタル造形、人気シリーズフィギュアなどいろいろ気になることについて聞いたことをお送りします!

■関連リンク
アルター