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【スペシャルレポート】フィギュア業界の現在・スケールフィギュアの雄、アルターに聞く[後編]

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7月 23, 2014 #new, #アルター
アルターに聞いてきたインタビュー、前編から続いて後半分となります。
前編ではアルターという会社の基本や造形、生産などについてうかがいましたが、後編ではフィギュアの広報についてから始まり、工場のことやデジタル造形などフィギュア界でのホットな話題、さらにはアルターからシリーズとして数を重ねている『ストライクウィッチーズ』と『魔法少女リリカルなのは』について伺ってみました。前編同様、インタビューは2013年12月に行われた物で、その時点での状況・お話しです。
お話を伺った、アルターの桜井猛さん(左)と、矢吹 崇さん
引き続きアルターの桜井猛さん(左)と、矢吹 崇さん(右)にお話しを伺いました。

アルターの広報体制

[colored_box color=blue]Q:広報について。ウェブでの自己発信や雑誌などについての取り組みの仕方は?

A:年2回のワンダーフェスティバル(主催:海洋堂様)と、同じく年2回開催されておりますメガホビEXPO(主催:メガハウス様)のイベント参加にて、新作展示等をさせていただいております。実際にデコマス、原型を見せられる機会でもありますので、大事にしておりますね。
また雑誌社へは画像を送って掲載依頼をお願いしておりますが、別途広告ページを設けたことは基本的に無いのは珍しい方かと思われます。宣伝活動はしているのですが、興味ある方は弊社のことを知っている状況かと思われます。
弊社製品を知ってもらうことは勿論大切なのですが、最終的には弊社の商品を実際見てもらう方が良さは伝わるのではないと思っております。だからこそ各イベントでの展示は力を入れております。[/colored_box]

矢吹:広報はイベントが中心ですね。年にあわせて4回、ワンフェスとメガホビEXPOがあるので、その場で実際に現物を見てもらうことを一番大事にしております。実際に見てもらって、あとで商品を手にしてもらい納得してもらうというのが一番の広報だと思います。良いものを造れば、自然とお客さんが広報してくれますから。

桜井:実際に見てもらう機会はイベントしかないですしね。他メーカーさんはけっこう店舗に置いていただくということもやっているのですが。

矢吹:うちはデコマスを基本1個しか作りません。グッドスマイルカンパニーさんみたいに2個作ってれば、1個は工場に収めて、1個は展示に使うとか出来るのですが。今後広報を強化しないといけないという話になれば2個製作になるかもしれません。

円安のこと、工場のこと

[colored_box color=blue]Q:円安で、価格面以外(企画の方向性とか)なにか影響はありましたか?

A:企画の方向性に関しては、大きな変化は特にありません。
会社によってそれぞれお客様に望まれている面があると思います。クオリティを求めることが現状は大変な時期でもありますが、弊社が求められているその点は変えずに進めていこうと工場側と打ち合わせをして、改めて今後についてお互い頑張ろうという流れとなっております。

Q:中国の工場の状況は? 今後他地域へ展開の可能性は?

A:確かにいろいろと考えることもありましたが、現状は無いです。WAVE永見様のコメントと同じとなりますが、中国の方々の情熱は高いので、お互い試行錯誤していき、より良い物を作り上げる方が今後を見据えても良い結果を出すのではないかと感じております。[/colored_box]

デジタル造形への取り組みについて

[colored_box color=blue]Q:造形や製造においてデジタル化の影響や、その取り組みはどう考えていますか?

A:『ストライクウィッチーズ』シリーズのストライカーパーツや各銃、『けいおん!』シリーズの楽器などデジタルで製作しているものは結構前から取り組んでおります。また各種台座も昔と比べれば楽にデザイン・出力が出来るようになりましたね。
やはりメカモノはデジタルですとシンメトリー(左右対称)も簡単に出来ますし、使える物は上手く使っていければと思います。
またキャラクターを全てデジタルで作っても、実際出力した物を見ると違和感があると思います。そこは手で微調整していけば良いと思っていますが、現在そこまでデジタルで作る原型師は社内にいないのですが、ゆくゆくはそういった原型師も増えていき、製作スピードUPなども出来るようになるかなとは個人的には感じております。[/colored_box]

桜井:ただ、ストライカーの元は大戦機とか古いやつなので、CADにはあまり合わないところもありますね。やっぱり手で造形して、もこもこしていた方がいいのかなって。ただ最終的には工場の方でCADにしてしまうので、そこでやっぱり情報は何割か減ってしまう、整理されちゃうというのはあるのですけどね。

矢吹:デジタル増えましたけど、うちで原型製作している方で、全部フルでやっている人はまだいないですね。会社には3Dソフトがあるので、社内原型師は自由には使えるようになっており、一応触ってもらっています。今までやったことがなかった人も一応は興味を持って手を出している、という状況ですね。

桜井:社内原型師でいじっているのは半分ぐらいですかね。

矢吹:今まで触ったことがない人も触って出力して、ゆくゆくはそっちの方がよくなる人も出るかもしれませんが、まあ使い方次第ですよね。手でやるより早いというのであればそちらを使えばいいと思うし。自分は手で造った方が早いと言うのであれば、もちろん手を使えばいいし。

『ストライクウィッチーズ』シリーズについて

[colored_box color=blue]Q:『ストライクウィッチーズ』について、いままでやってきての感想・思いは?

A:最初はこんなに続くシリーズになるとは思っていませんでした。今思うとパッケージにシリーズ「01」を入れておいたのは良かったなと思います。
おかげさまで「リーネ」で501のメンバーは完走できそうです(編注:インタビュー後に宮藤1.5も発表されました)。
『ストライクウィッチーズ』を今までやってきた感触としては、版権元さんがけっこう寛大で、実際にある兵器であればアニメの設定と異なっていても、実物のテイストを盛り込んであればOKになるという感じなので、どんどん武器などのモールドはエスカレートしていきました。
きっかけは「シャーリー」の銃のBARの資料をお願いした時、実銃の画像がおくられてきて、あぁ実銃準拠で作ってしまって良いのだと分かって以降でした。
「宮藤芳佳」と「坂本美緒」は同じ機関銃ですが、後でリリースした「坂本美緒」は実銃のモールドをかなり取り入れています。
『ストライクウィッチーズ』のスケールフィギュアは、武器やストライカーを装備した格好良い感じでないとOK出ないのですが、機会があればかわいい感じのウィッチたちも立体化したいと思っています。

Q:『ストライクウィッチーズ』の造形で気をつけているところ、苦労しているところは?

A:ウィッチ達が可愛いながらも格好い感じになるよう腐心するのはもちろんですが、やはりストライカーユニットや、銃器など武器類の造型彩色には時に力を入れています。最初はメカ部分と、キャラクターの部分は同じ原型師さんにお願いしていましたが、精度を上げるため途中から原型師を分けるようになりました。逆に原型師を分けたことでバランス調製が難しくなった面はあるので毎回試行錯誤しています。
彩色に関しても工場が再現できる限界を見極めながら、使用感や、質感を感じ取れるようにしています。
版権元さんも武器や、ストライカーユニットには特にこだわりを持って監修してくださっています。
後は皆飛行している状態なので、違いが出るポーズが段々出しにくくなっていることでしょうか。陸戦のウィッチたちなども早く登場してくれるとバリエーションが出来て面白い展開が出来ると期待しています。[/colored_box]

桜井:501の全員が揃う、完走するとは最初は夢にも思っていませんでした(笑)。途中まで来たところで、これならいけるかなとは思いましたが。お客さんがこれほど支持してくれているのって、なかなかないですしね。

――ストライカーユニットとかカッコよくて立体向きですが、ポーズとかが限定されてしまいますよね。

桜井:そうですね。膝が曲がるといいのですけどね。足をどっちかに開くしかなくなってしまうので。

――『ストライクウィッチーズ』では原型師さんがメカとフィギュアの部分で違ったりすることが多いですが?

桜井:ただやっぱり1人でやった方がバランスは良くなると思います。まず1人でやってもらって、それを受け取ってメカが得意な人が清書するっていうのがいちばん理想ではあるのですけどね。

――シリーズが続くとストライカーの大きさを揃えたりもありますよね。

桜井:そうですね。ただ身長差とかありますから同じ機体でもちょっと微妙に調整はしております。

矢吹:立体映えを考えていますね、やっぱり。

――ストライカーも武器も実在のというか、モデルがある物を作るにあたっての苦労は?

桜井:最初はアニメ設定で宮藤を作って、その次にサーニャを作ったのですが、サーニャのストライカーは実機のモデルがないのでディテールとかバランスがわからなかったんです。そのあとシャーリーの時、版権元さんに資料をお願いしたら実銃の資料をどさっといただいたのです。それでああ、実銃をベースでやっていいんだっていうことになって、最近は迷ったら実銃を参考にっていう風にしています。

――ルッキーニで銃の脇のボックスの中に入っている銃の弾帯が、いくつか置きに色が違うってところまでやっていましたよね。しかもそのボックス、蓋が開かないので隙間をのぞき込まないとわからないという。

桜井:そうですね、曳光弾以外に魔法弾も色をつけて下さいっていう監修が入って。

――魔法弾?

桜井:魔法の弾ですね。何発かに1発特別な弾が入っているって設定で弾帯の色が違っているのですよ。アニメ設定にはそこまでの色の指定ないのですが、監修時に口頭で指示をいただきました。

――これから先ということですと、新作アニメもありますね。

桜井:そこはみなさんが買っていただければ(笑)。

矢吹:買っていただければ(笑)

――ハイデマリーも発表されていますが、ストライカーが大きいですよね。

桜井:翼が大きくてさらに銃が20mm機関砲だから相当大きくなっています。

『魔法少女リリカルなのは』シリーズについて

[colored_box color=blue]Q:なのはシリーズについてはいかがですか?

A:TVアニメ1期が放映中の頃から企画・商品化を行い、ここまで長く関わることになるとは思っていませんでした。それ程までに人気の出た作品に係われたことは嬉しいですね。
可愛いのだけど格好良い各キャラクター達を、どのようにすれば魅力的な姿で形に出来るのか。バリアジャケットで戦う“動”のポーズで見栄えを踏まえつつも、どこか優しさを感じるような造形が続いたかなと、振り返ると感じますね。
顔や瞳が従来のスケールと比べて大きいので、面の凹凸はかなり気にして調整しております。少し削ったり盛ったりの繰り返しで、どこから見ても良い物になるようにしたのは慎重に行った箇所となります。
現在もシリーズは続けて原型製作しているものがありますので、ご期待していただければと思います。次回作のThe MOVIE 3rd Reflection からも様々な展開が出来るように頑張りたいと思います。[/colored_box]

矢吹:『なのは』についてはシリーズとして連続して出してきたという意識ではなく、その場その場でやりたい物をやってきたらここまで増えてきたという感じです。なので、劇場版とStrikerS版のはやてが同時期にあったり、Vivid版もあったり。水着だったり私服だったりバリアジャケットとかバリエーションもかなり出させて貰っていますね。

――原型師の爪塚さんもかなりノって作られておりますね。

矢吹:そうですね、原型師さんのテンションが高いというのは左右していると思います。

――なのはのフィギュアを作る際に気をつけているというのはありますか?

矢吹:どうしてもなのはのキャラは他の作品に比べて頭身が低めで顔が大きい=顔の面、瞳が大きいのでその分いろいろ気を遣っています。頬とかの顔のラインも特徴的なので、修整を何度も加えていたりしますね。

これからのアルター

[colored_box color=blue]Q:今後の展望について

A:まずは発売延期となっているものを解消しつつ、新作を定期的に展開していく。といつもと変わらないスタンスになると思います。
人気作や時代にあった物を作りたい気持ちもありますが、お客様が立体物として欲しいのかは、どんなに経験を積んだり、リサーチしてもわからない部分も当然あります。だからこそ、自分が面白い・やってみたいと感じたものに情熱を傾けて、作り上げていく以外にありません。成功するかどうかは運次第というところもあります。しかし、作品を知らない人でも引きつける良い物を作るのに必要なのは、今出来ることは全て行うことだと考えますし、先を見据えてもそのスタンスが望ましいでしょう。そんなところが今後も変わらない弊社の展望かと思います。[/colored_box]

矢吹:延期をしてご迷惑をかけているのはわかっているので、ひとつひとつ完成させていければ。新作も定期的に出していきたい、発売しない月はないようにしたいと思っています。

――目標としては月何個みたいなものは?

矢吹:3~4個ぐらいのペースを保ちつつもいままでと同じ品質でと考えています。

――作るキャラクターについては、その時に流行っている最先端を追っかけるのではなく、最後まで作品をしっかり見極めた上でじっくり作っているという印象がありますが。

矢吹:旬の作品に関係なく原型師が気に入った物を作っている部分もあるのですが、旬の物は一切やらないと言うわけではなく、面白いと思えば急いで作っていくこともあるでしょうし、そのあたりはバランス良く上手くやっていければと思います。

桜井:旬の物じゃないと言っても、それが求められていると思うからこそやっているわけですし。でも企画側としては商業的にやらなきゃいけないというものも多少はあるのですが、そのあたりは作る側にはあまり気にせず作りたいものを作って欲しいという気持ちは大いにあります。

――そういう流れがアルターというブランドのカラーとして出ていますよね。

矢吹:人気作の方が数は出るかもしれませんが、フィギュアの造形的魅力で気に入ってもらえるお客さんもいると思いますし、そういう方がゆくゆくはうちのお客さん、ファンにになっていってくださるのではないかと思っております。

――今後もそんな感じでブレずにということですね、ありがとうございました。

 前編でも書きましたが、このインタビューは昨年、2013年の12月に行われたもの。こちらの一方的な都合で掲載が遅れていた物です。インタビューで伺った新作フィギュアについてのお話しは完全に時季外れになってしまったので、カットせざるをえませんでした。
フィギュア業界を巡る状況はこの半年で変わったところもあまり変わってないところもあり。フィギュアの価格は着実に高くなり、個数も厳しいものもあるときいていますし、消えていったメーカーもあります。工場についてはグッドスマイルカンパニーが鳥取県に工場を作ることが正式発表されました。デジタル造形に付いてはますます注目度は高まっています(これについても1つ取材したネタがあります。近日中に公開出来ればと)。
そんな中でアルターの体制やフィギュア企画製作についての考え方だったり、現在の状況についての見方だったりを伺うことで、その独自の立ち位置をあらためて確認し、そのフィギュア製作の信念を知ってもらえれば。そしてひいてはフィギュア業界全体の今後についてそれぞれ考える一助になればと。
インタビューだったりレポートだったり、今後も引き続きお送りしていきますので、お楽しみに!

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