竜人氏初のPVCフィギュア『マジカルエミ』受注中! 竜人氏スペシャルインタビュー&テストショットチェック!

By on 2014年7月25日

以前この記事でニュースをお伝えした、原型師の竜人氏がPVCフィギュアを自ら製造販売を行うというトピックは、業界的にも大きな話題となりました。
そのフィギュア『魔法のスターマジカルエミ』の受注がいよいよスタートしました!

emi01注文のための特設サイトはこちら→http://ryuns.free.makeshop.jp/ 価格は15,300円(税込)、受注締め切りは2014年9月8日まで!

1/6 マジカルエミ
『魔法のスターマジカルエミ』

1/6スケールフィギュア:全高約22センチ(台座含む)
原型:竜人
発売元:リューノス
製造:アルター
価格:15,300円(税込)
受注締め切り:2014年9月8日まで
発送予定:2014年11月予定

ということで、この受注開始にあわせて竜人氏にいろいろとお話しをうかがってみました。

竜人氏と完成品フィギュア

――2001年4月なのでもう13年前になりますが、私がやってたフィギュア専門ムックの1号目で原型師さんにいろいろとアンケートして、竜人さんにもお願いしていていたんです。いろいろ質問をしたのですが、その中に「完成品フィギュアに興味ありますか?」というのがあったんです。

竜人:そのころってもう完成品ってありましたっけ!?

――大きいフィギュアだとコールドキャストが中心で、PVC系はカプセルフィギュアとか小さいサイズの物しかなかった時代ですね。そのアンケートの竜人さんの答えが「まったくありません」だったんです。他の人が割と「まだまだだけど興味はある」ぐらいに答えているのに、竜人さんだけはきっぱり断言していて(笑)。

竜人:言ってそうだ(笑)。13年前か……。

――ちょうど脱衣補完計画の最初の綾波を発表した頃ですね。

竜人:じゃあまだ尖ってる頃ですね(笑)。ああ、そうかそんな頃なんですね。でもなんかイヤだったんですよね。多分肌の色がイヤだったんですかね。肌色の処理なんかはなんか死人みたいな色だったし……。

――まだあの頃は完成品フィギュアは塗り肌中心でしたしね。

竜人:表面処理とかも向こうでしなおしてたんじゃなかったっけ? コールドキャストを塗って磨いて塗装してるんでしたっけ。なんか多分イヤな理由がたくさんあったんですよ。

――その後結構たってPVCフィギュアのクオリティもそれなりに上がって来たころ、雑談だったかインタビューだったかで、竜人さんから「今は原型から何%ぐらい再現できるんですか?」と聞かれたんです。それに「80%位にはなってるんじゃないですかね」と答えたら、「それが99%とか95%じゃなきゃいやなんです」とおっしゃって。覚えてますか?

竜人:へぇ~~(笑)。全然覚えてない(笑)。再現度がですか? はぁ~。

――さすがにその頃は今ほどはクオリティも高くはなかったですし。

竜人:やっぱり尖ってたんですよ(笑)。まあでもそこは僕も歳を取ったおかげで丸くなったっていうかね。

――結論はそっちですか(笑)。

竜人:あとはまあ……僕の妥協点が下がったのかよく解らないですけど、実際このテストショットがこんだけ綺麗にシャープに出てますしね。

――間違いなくPVCのクオリティも上がってますからね。

竜人:これはもう、あの当時とは次元が違いますから。まあ、それでも気になる所はありますが。

――そういう意味では、逆に今竜人さんがやるっていうのはアリだなって思います。

竜人:顔の引けとかも思ったより変なのは無いよね。昔はもうあっちゃこっちゃ引けてましたからね。脚も細くなっちゃうし顔も変わっちゃうし。今は引けないようにグッと肉薄にして、引けないようにインサートを入れてやってるんですよね。

――昔は原型師さんの方が引けることを意識して太くするってこともやってましたよね。

竜人:でもどこが引けてどこがそのまま出るか、どう転ぶか解らないって言ってましたよね。そんなバクチみたいなことをやってられないですもん(笑)。

マジカルエミのこと

――今回『マジカルエミ』を選んだのは?

竜人:せっかくPVC第1弾をやるんだから、キャストじゃ出来ないことをやろうって思ったんです。これをキャストでやったらすごい値段になるじゃないですか。

――背景はキャストの塊ですもんね。

竜人:キャストじゃ出来ないことをやった方が面白いなあと思って。今回のマジカルエミはいつかリメイクしたいと思っていて、昔出来なかったことをやろうと思ったんです。昔のは今見ると見るも無惨ですからね。20数年前くらいで当日版権もまだない時代でしたからね。……まあ最終的に『マジカルエミ』を選んだのは面白いかなと思っただけで、単純にそれだけですね。

――面白いって言うのは作品として面白い? それとも造型としてですか。

竜人:造型としてもこういうのは半身像はあまりないじゃないですか。なのでPVC向きかなと思っただけで。あまり他の商品をを見てないだけかもしれないんだけど(笑)。

 生産のこだわり

竜人:抜きの時に引っかかるところは教えてもらって僕が自分で埋めてるんですよ。テーパー変えて抜けやすくするにしても埋めるにしても、自分の理想の埋め方っていうかあるんで。工場側で手を入れられると自分の理想の埋め方とは違ってしまうので。

――今回は生産のディレクション的なことまでやってるんですか?

竜人:アルターの通常のディレクションに僕の意見を取り入れてもらってます。形状とか塗装のテストショットが上がってきたものを担当さんがチェックした後、追加で僕が見て、ここがダメだとかここを直して欲しいというのを伝えています。自分ひとりじゃディレクションできないですけど、そういうプロがディレクションしてくれているところに参加して、自分の好みに近づけてるという感じですね。

――竜人さんの要望を現場に分かる形に翻訳(言語的な意味ではなく指示として)してくれるっていう。

竜人:そうそう、その工場との仲介とかも。僕がひとりでやり取りしてたらその翻訳が出来ないので「もう何度もこう言ってんじゃん!」っていうことになっちゃいますし(笑)。本当に勝手が違うんでね。PVCはいままでやってなかったけど原型を作るというのでは同じだろうと思ってたら全然違いますね(笑)。まあ違うというか、良い物をつくろうと思ったら、それ用に考えて頭を切り換えないといけないですね。

テストショットを見て

ここで竜人氏に持参していただいたテストショットをご覧いただきましょう。形状を詰めていくためのもので、「T1」という最初のテストショット、「T1」に指示した修整を反映した「T2」という2回目のテストショットです。ここからまだまだ修整は進行しています。

T1

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T2

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下のクリアーパーツはアルターが作成したベースです。フィギュア単体でもかなり安定しているのですが、このベースでより確実に倒れないというわけです。なお、いずれのテストショットももちろん実際の成形色とは異なります。

――ここまで仕上がってきた物を見てどうですか?

竜人:これはもう、ツイッターにも書きましたけど、我慢できないほどではないです(笑)。色見本もキレイですし。形状のほうは及第点を何点にするかですけど、まあまあっていう。T1が上がってきて、良くないところを突っ込んだらちゃんとT2では直ってきたり。
再現度ということで言えば背面のパーツの裏面で磨きかなんかでダルくなってんのか、シャープさが無くなったりとかしてる箇所はあります。蝶の触覚は細かったんだけど太く修整してあるし。ただ背面パーツは裏面だからってことで納得してもいたので。表側に関して言うとまあキレイです。重箱の隅はあるけど我慢できないところは直ってるし、前髪は思ったよりシャープにピシッと出ているんで、そこはありがたいかなって。他にも素直にいいじゃん!って出来のところもあるし。出来てるところと出来てないところの落差が激しいので、出来るだけ直そうと思ってるんですけど、まあまあ凄いなと思いましたよ。

――色付きのテストショットはどうですか? 塗装まで指示するっていうのは、竜人さんとしては初めてのケースになるわけですよね。(編注:インタビュー現場にはありましたが、まだお見せするレベルではないということで写真はありません)

竜人:工場によって強み弱みがあるみたいで、ピシッといってないところもまだありますね。色見本としてはまだグラデとかちょっときついけど、髪の毛とか結構綺麗にいってるんですよ。それは今までの工場がやってきたことの経験値で得意不得意があるんでしょうね。塗装はやはり量産となると難しいですからね。ただ色味は僕が塗ったのより綺麗です(笑)。

最近のフィギュア原型について

竜人:原型師もビックリするくらい増えて、しかもみんな上手い。あと今は原型師も流れが変わってきてるじゃないですか。僕は古株なんで、ボーメさん、K・PIEROさんのキャストのゴロゴロした塊を見て入ってきてる。でも今の人たちなんかはpixiv的な、絵の感覚を持ってきてますもんね。PVCフィギュアを見て入ってきてる人が多いでしょうから、僕らとは感覚も違うでしょうし、そもそもの発想が違うって感じですからね。

――デジタルから入ってくる、そもそも入り口から違う人も多いですしね。

竜人:この前ある原型師さんと電話してたら、最近の若い原型師さんはPVCにマッチした原型の作りになってるって。こういう彫刻をとか、こだわった造型をなんて僕らは言うけど、PVCは完成品が前提じゃないですか。目とかもモールドも無かったりしますし、彫りがどうなのって言っても、塗りがズレたり再現できなかったりしたら……。そこまで割り切りたくはないですけど、必要ないって言われたら確かに必要ないのかもしれませんが。難しいんですけどね。商品としてのクオリティーでどこに基準を、比重を置くのかってことですけど。デジタル原型に関しては、良くいわれてますがツールなんでデジタルだから良い原型が誰でも出来る分けではないですからね。まあそれでもデジタルならではの表現がありますしね。最近はデジタル原型でもアナログと変わらない柔らかい線が出て、非常に良く出来ている原型もあるので時代だなあとしみじみ(笑)。

 これからのこと

――次の企画ももう進んでるんですか?

竜人:もうやってるんですよ。まだ言えないですけどね。今いろんな商売の本を見ても書いてあるじゃないですか、自分の強みを活かしていかないと生き残れないみたいなの。だから素直に、エロをやった方が良いかなと思ってますけど(笑)。エロというか、そに子みたいなセクシー系をね。

――確かに、フィギュアはエロいのは売れますよね(笑)。

竜人:それにネタですよ。PVCフィギュアのファンって原型師の名前なんて興味ないですから(笑)。本当にキャラクターと出来……出来よりもキャラクターなんですかね。キャラグッズ扱いで似せていけない原型師は厳しいですね。

――イラストレーターだとこの人の描いた○○っていうのが受け入れられてるんですけどね。

竜人:竹谷隆之さんの竹谷風みたいなことをPVC美少女フィギュアでやってる人とか誰もいないんじゃないですか? メーカーのディレクションにも関わる話ですが、そういう打ち出し方をしてるのってあるんですか?

――メーカーさんでそういう方向性を考えているところもあるようなんですけどね。

最後にまとめ

――ではそろそろまとめに。とりあえずここまでやってきてどうでしたか?

竜人:もう個人でメーカーはやれないなぁって思いますよ(笑)。組織じゃないと完成品メーカーは無理ですね。

――そう考えるとかなり大胆ですよね、竜人さんもいきなり始めて。

竜人:いや僕はそこはなんとかなるだろうって思ってたんですよ。

――それで始めてみたら案外大変だったと(笑)。

竜人:(笑)。そんなの今さら他のメーカー担当からしたら「何言ってんだボケ」っていうね。僕もPVC始めるのが遅いから他の原型師にこのインタビュー記事も読まれて「何言ってんだい」って笑われて。申し訳ない今さらこんなんでっていう(笑)。
歳を取ったらプロデューサーの方に回らなきゃいけないのかなって思うんですが、まあ僕がプロデュースを出来るなんて到底思わないけど、でもやってみなけりゃ解らないことも本当に多いんで本当に。

――そういう意味では今回のことは相当勉強になったという感じですね。

竜人:そうですね。まあこんなことはもうみんな経験してることでしょうが、俺が遅すぎるっていうね(笑)。

――最後に買ってくれるユーザーにここを見てくださいとかあれば。

竜人:いや、特には無いです(笑)。ただ買って下さいとしか言えないです(笑)。

――ずいぶんあっさり(笑)。ありがとうございました。

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