BEACH QUEENSの秘密その1・どのようにして始まったか? 基本コンセプトは何か?

By on 2013年11月27日
DSC01501先日の宮沢模型展示会で一挙に多数の新作を発表した、ウェーブのBEACH QUEENS。
1/10スケールで水着という基本コンセプトで200体を突破。フィギュアシリーズとして固定ファンも得てすっかり定着したものになっています。
もともとその展開スピードには定評があり、他よりも早くフィギュア化を発表したり、どこも出していないような作品やキャラまで発表、メインメンバー全員揃えたり、コレクション製が高いのも特徴です。そして、宮沢模型展示会での発表を見ても分かるとおり、その発売ペースはさらに加速する勢い。
BEACH QUEENSはどのようにして生まれたのか、さらにいま何が起こっていてこれからどうなっていくのか、お話しをいろいろと伺ってきました。お話を伺ったのは担当の永見さんと黒木さんです。

BEACH QUEENS以前

永見:2000年代半ば、PVCフィギュアが凄く売れてた時期があったんです。それこそ、10個出したら8個は儲かる、1個はかなり儲かる、せいぜい1個が赤字かなくらい。何でも出せば売れる時代があったりしたんですが、やがてそういう時代も過ぎて、他社のとのバッティングもあったり、このままやってると血を吐きながらのマラソンをしなければならないなぁという状況になってきたんです。他社を出し抜いてでもやっていくくらいの覚悟と根性で続けていくというのはちょっとしんどいなぁと思ってて。

PVCフィギュアが出回り始めた初期は、価格は3000円台。最低でも3000個以上出荷するのがあたりまえで、ヒットすれば数万個といわれてました。現在は同じくらいのサイズのフィギュアが8000円から9000円、1万円超えも珍しくなくなり、3000個行けばむしろ上々という状況も。大ヒットする物は相変わらず数万個売れたりしていますが、そのクラスはかなりレアなケース。

永見: もともとトレジャーフィギュアコレクション(TFC)というフィギュアシリーズを立ち上げたときに、他社で1/8はいっぱいででてるので、1/10でやればコストも下げられると思ってたんですが、いざやってみると色数やパーツが多いと1/8と値段の差が出せなくて。お客さんからは1/8だったらほしいのにとか言われたり、年々フィギュアの値段が上がり始めて、さてどうしようということになったんです。そんなころに、フィギュア開発の軸になってくれてる黒木が、いっそのことこれからフィギュアは全部水着でやっていくってことにすればいいんじゃないですかっていうのを、半分やけに近いような感じで企画会議で話したんです。もしかしたらそれはいいかもしれないと。当時ばくちだったんですけど。
黒木:満場一致ではなかったですよね(笑)。
永見:メーカーの姿勢として手をぬいているように見えるっていう意見だったり、エロさを押し出して売りにしようとしてると思われて賛同できないという声とかも会議で出てました。
黒木:問屋さんとか販売店さんとかで話しても、いや~水着のフィギュアはねぇ……って言われてたりもしました。

元々BEACH QUEENS以前のトレジャーフィギュアコレクションでも、水着フィギュアが続けて出たときに、お客さんからは「また水着か、手をぬいてる」みたいなことを言われたりしたそうです。

BEACH QUEENSにかける決意

永見:当社は社内原型師はいなくて全部外注でやっている体制なんです。このままやってると原型師さんのスケジュールの調整がどんどん難しくなってくるだろうと。それに、他社さんとは違う独自性を出したいと思ってた矢先でもあったので、もしかしたらいけるかもしれないと思って時間をかけてみんなを説得したんです。やるからには中途半端ではなく、ほとんどすべてをこのシリーズにすると決めて、外せばもうあともない、フィギュアつくるのもやめて、へたすりゃ会社もずたずたになる可能性もなくはない、そこまで腹をくくったんです。

最初にこのBEACH QUEENSの企画を聞いたときは、思い切ったなぁという印象でしたが、ここまでの覚悟だったとは。

永見:フィギュアは原型に3カ月もしくはそれ以上、生産に半年、1年近くかかるプロジェクトなんです。いろいろと検討を重ねました。1/10スケールで良いんだろうかという懸念もありました。当時は1/8から1/6が一番多く出ていたので、1/10スケールだと数百円で売ってるフィギュアとかクレーンゲームのフィギュアに近くて、それなのに3800円とか4000円っていうのは高いという声が出るのは危惧してました。思い切る度胸は必要だったんですが、このまま現状を守るだけだと将来的には厳しくなるだけだからチャレンジすべきではないかということで舵を切って。会社に企画は通して、原型師さんにも理解してもらえてメドは立ったんです。

当時の水着フィギュアの立ち位置

永見:今とは決定的に違う状況があって。当時は水着フィギュアで作りたいって版権元さんに申請しても簡単にOKをもらえる感触ではなかったですね。その作品からの初めてのフィギュア化ということであればやはり普段着や作品のキーとなる衣装のフィギュア化が一番求められるし、エロフィギュアにしたくて水着にしたいんじゃないですかと誤解を受けることもありましたし。いまだったら、ウェーブさんなら水着ですね、って版権元さんから言っていただけたり(笑)、かなりご理解をいただける状況になったんですけど。

BEACH QUEENSがスタートしたころは、フィギュアの衣装が脱着できるいわゆるキャストオフが全盛時代。ひどいものでは版権元に伝えずにギミックが仕込まれていたという話もありました。

シリーズ基本仕様

永見:BQはトレジャーフィギュアコレクションの中の1シリーズということになります。TFCもBQ以外のシリーズを増やしていけるかもと最初は模索もしたんですが結局やるからには集中して徹底しようということになったんです。シリーズ名を考えるのも時間割いてやってました。あまり気張った名前ではなくてお客さんが覚えやすい名前にしようと思って。社内で1週間公募をかけてみんなから意見をもらって、黒板にいろんなシリーズ名を書いて考えたんです。BEACH QUEENSって決まった時に、これみんな略すよねって。これいいの?って物議を醸しました(笑)。偶然なのか意図的かというと、もちろん気づいてはいたんですけど、お客さんがおぼえやすければいいんじゃないかなと。

BEACH QUEENSを略すと「ビーチク」。はい、そういうことです。

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▲左がBEACH QUEENS第1弾『宇宙をかける少女』獅子堂秋葉。この足の幅が基準になっています。

永見:ベースもいろいろと考えました。コレクションする前提だったので、並べたときに砂浜みたいに見えればいいねって。並べやすいように六角形というのも黒木からアイデアが出て、大きさも最後まで調整しました。大きすぎず小さすぎず、で並べたときの大きさと、後ろに立たせたときに間から見えるようにと考慮しました。結局第1弾の秋葉が足をがんと開いたポーズでいっぱいいっぱいで、これ以上大きく拡げるフィギュアもそうそうでないだろうし、ちょうどいいんじゃないかというので決まりましたね。

ベースについてはその後座りポーズで2個使うなども。ベースは現在はさらに工夫が施されていますが、それは次回の記事で。

永見:ヒットする価格って切りの良い数字からちょっとだけ安い、たとえば1980円みたいな数字とかじゃないかと 思ってたんで、3800円なら税込で3990円、ちょうど良いなあと思って。当時の水着じゃないTFCは4000円超えてたんで、水着なら3800円でいける んじゃないかと。価格が決まってると悩まなくて済むていうのもあって、3800円でずーっとやってました。

イレギュラーもありますが、ほぼ3990円だったBQもついにこの12月発売から4200円に。このあたりも次回記事で。

原型料について

永見:BQを始めた時期、フィギュアのクオリティがどんどん求められるようになってきていて、原型師さんも疲弊してるのが見えてきてたんです。原型作るのにかかった時間に比例して原型料が払えてるわけじゃないので、このままじゃあと。それが1/10スケールの水着ということなら、基本的には原型師さんのかかるエネルギーと、当社として出せる原型料とが合致するんじゃないかというのもありました。もっとも、作ってる人からすれば1/10も1/8もそれほどエネルギー変わらないという話はありますけど。

BEACH QUEENSはカロリー低そうだからやってみたいと言ってた原型師さんが、実際にやってみたらよかったとおっしゃってて、その後続けているという例も。衣装が水着な分楽なことは楽らしいですが、ただこれは一定以上の実力があってこそ。身体のラインがそのまま出るので、服でごまかせず、しっかりした造形力が必要なのです。

水着について

黒木:水着でも難しいですね。普通の服だと作り込みの難しさと言うのがあるんですが、水着だと体のラインが崩れると商品になりにくい、デッサンがしっかりしていないと難しいというのは意外なところでしたね。
永見:正直色数も少ないしパーツ数も少ないのに、なんで服着てるときとあまりコスト変わらないんだっていまだに工場ともめるんですけど(笑)。ドリームテックとかで普通の服を着たフィギュアも出してますが、BQは割高だなぁと思いますね(笑)。

実はコスト的にも技術的にも、水着は思うほど簡単ではないというお話し。

立ち上げ時の作品タイトル

永見:いよいよスタートで多くの版権元さんに理解していただいて、初期から作品的に強いタイトルがあってそれをやらせてもらったのも大きかったですね。『魔法少女リリカルなのは』だったり『けいおん!』!だったり。

シリーズ第2弾として同時に『なのは』『けいおん!』が発売されています。『けいおん!』の軽音部5人全員を1つのフィギュアシリーズで揃えたのも、かなり早かったのです。

永見:シリーズの一作目は『宇宙をかける少女』です。まだ方針にちょっとブレがあったんですよね。価格について、バリエーションのボリュームある方を4000円で出してたり。
黒木:これやったときにイラスト描き下ろしてもらったのは大きかったですし、今でも軸になっている原型師の小川陽三さんとクラムジーさんにやってもらったというのも大きかったです。
永見:お店や問屋さんに対して、カートンで買うと描き下ろしイラストを使ったクリアファイルをつけるということをやったりしましたね。普段うちはそんなことやらないんですけど、これは力をいれましたね。

TFCで『舞-HiME』『舞-乙HiME』を出して人気フィギュアとなっていました。その流れで同じサンライズの『宇宙をかける少女』も手がけ、フィギュアポーズの描き下ろしイラストも提供してもらうなど、良い関係を築いています。「神凪 いつき」の流通限定バージョンの「下山 むつみ」のみ、4200円税込になっています。初期の物ではこれのみイレギュラーな価格。

永見:立ち上げすぐの頃に電撃ホビーマガジンと組んで、毎月コーナーで紹介してもらってました。ちょうどアスキー・メディアワークスでも『とらドラ!』『俺妹』『とある』とか人気タイトルが続々出てて、それをちょっととしたおまけ付きの電撃Ver.を出したり。このコラボで大きく扱ってもらったというのも大きかったと思います。

電撃ホビーマガジンの連載「電撃BEACH QUEENS」では塗装見本品や原型でのフィギュア紹介、電撃スペシャル版の通販などを毎月掲載。連載担当ライターの白虎かなめ氏が、BEACH QUEENS黒猫用の水着のデザインをするというコラボも。

 シリーズ展開

永見:原型師の実力はもちろんですが、作品の人気とキャラクターの人気は意識しました。1/10で水着なら他社とのバッティングはほとんど無いだろうとポジティブに考えて。売れないから出てないという考え方もあったんですが。だーっとやっていくことで少しずつお客さんも増えて、手応えが感じられるようになってきましたね。ある程度見えてきて人気作品を商品化するチャンスをどんどんいただけて、『Fate』だったり、『魔法少女まどか☆マギカ』だったり、シリーズがそだってきたというのはあると思います。

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 こうしてシリーズをスタート、確実に支持層を増やし200体を突破したBEACH QUEENS。
フィギュアを巡る状況が大きく変化し始めているいま、新たな試みを行いさらにペースアップをすすめています(先日の展示以外に10体以上完成に近づいているとか)。次回はそのあたりについて! デジタル造形が大きなキーワードとなっているのです!

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